後日談も素晴らしい、珠玉の短篇連作最終巻 - 群青学舎(4)
群青学舎(4)/入江亜季(Amazon)
あり胡同(作者サイト)
気付いたらビーム本誌に載ってないなぁ、と思っていたら終わってしまっていたんですね。(最終回読み忘れてた)
寂しくはあるけど、Fellows!の連載があるのでそちらを楽しみにしつつ、ひとつの区切りとして気持ちの整理をつけることとしましょう。
そもそも短篇連作ですし、ひょっこり同じようなコンセプトの短篇が読めるかもしれませんしね。
最終巻の4巻は10篇と、いつものように描き下ろしのアフターストーリーを収録して、300ページ近いボリュームがあります。
毎巻のことではあるのですが、読んでいて思うのは、入江亜季先生の短篇は良いなぁということ。
1話完結の話はもちろん、前後編や3話構成の話が映える。
パッと手にとってすぐ楽しめる、これがオムニバス短篇連作の醍醐味ですよ。
「群青学舎」は舞台も様々なのですが、今巻は「スパイ・アンド・スパイ」にちょっと意表を突かれました。
タマゴ型の体型に手足が生えたおっさん2人が列車のボックス席で争う話なんて意外で、オムニバスだからできる彩りの豊かさが見えました。
また、3話構成の「七色ピクニック」、「七色ファミリア」、「七色トゥモロー」も良かった。
セクシーな美人ママと3人の息子、それと旦那の話で、幼かった3人息子が3話目で旅立つなど、じんわりくるものがあります。
1、2話目では息子があまり成長しておらず幼いままなのに対して、3話目でいきなり1人立ちするくらいになっているのが、「パパのお嫁さんになる」という幼い娘が愛しいと思っていたら、いきなり嫁に行く年齢になっていたくらいの心境ですよ。息子だけど。
短篇連作の中でひと際目立つのが「続々々ピンク・チョコレート」と「完ピンク・チョコレート」、それに「橋の向こう側」の前後編。
「ピンク・チョコレート」はお馴染みのカップルの話で、「付き合いが長い恋人なら波乱のひとつやふたつあるよね」といった感じで、かつ上手い具合に”完”とするだけある話でした。
アイテムとして”ピンク・チョコレート”が話のキモになっているのもニクイ。
「橋の向こう側」は「コダマの谷」のライダーとマージの話でニヤリとせずにはいられません。
視点が旅先の青年のものなので「コダマの谷」を未読でも楽しめるつくりになっています。
それでいて、アフターストーリーの「四季」にはライダーとマージがしっかり登場しているのが良いよね。
「橋の向こう側」そのものもそうなんですが、カップルの後日談はなんでこんなに嬉しいものなんだろう。
アフターストーリーの「四季」は全キャラではありませんが、「群青学舎」に出てきたキャラのその後を切り集めたつくりになっていて、まさしく集大成ともいえる後日談。
これまで読んできた者にとっては、最大級に嬉しい描き下ろしですよ。