懐かしくピュアな下町人情物語 - 月光橋はつこい銀座
月光橋はつこい銀座/イシデ電(Amazon)
でんやこのごろ 〜イシデ電ブログ〜(作者サイト)
志村貴子先生が宣伝されていたことでこの漫画を知って、既刊の「私という猫」とともに買ったのですが、これが面白かった!
懐かしいムードのある月光橋商店街の子供達や、大人の若かりし頃の思い出を交えて描かれる尋常物語が「月光橋はつこい銀座」です。
木造商店やら、川にかかるアーチ状の橋、商店街の路に鳥居のように立ち並ぶ「月光橋はつこいぎんざ」と書かれた看板。
舞台の月光橋商店街はノスタルジックな雰囲気たっぷりで、そこに住む人達は賑やかに生活しています。
話のメインとなるのは子供で、これがまた懐かしい記憶を呼び起こされるんですよ。
私が子供の頃はファミコンが遊びのツールのひとつだったんですが、外で遊ぶことも多くて、公園が近くになかったもんだから道路か少し遠出して遊んだものです。
今は外で遊んでる子供はなかなか見かけません。
月光橋商店街は、商店街だけあって住宅地と違って外が見た目にも賑やかで、外に活気があります。
遠出をすることもあるんですが、必然、駆け回る子供の姿が多くて懐かしさを感じます。
で、商店街だから大人同士の交流もあり、子供と大人も顔見知りだったりするんですね。
懐かしさがあるだけの漫画ではなくて、商店街はスーパーやチェーン店に押されている現実があり、大人はそれをあまり表に出さないようにしている。
でも、子供はそれを感じ取って知っている。
このまま商店街で生きていくしかない、乾物屋を継ぐんだ(主人公の家は乾物屋です)と将来に不安を感じていたりします。
そうやって限定的に考えていたのが、ふとした経験でパアッと世界が広がる。
それは成長で、そういった描写が良いのですよ。
子供視点だけでなく大人の視点もあり、子供の言葉にはっとさせられたり。
大人が思いもよらないことを考えていたり、大人には取るに足らないようなことを物凄く重大なことに繋げて考えていたり。
大人は子供の背中を押し、逆に気付かされたりします。
この本気のぶつかり合いが優しく沁みます。
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珍しい形なのに存在感のある、そんな漫画。