読むとリフレッシュできる自然の中の生活4ページショート - 月刊サチサチ



水惑星年代記 月刊サチサチ/大石まさる(Amazon)
大石工画店(作者サイト)


読んで癒される漫画は数あれど、私にとっては活力も沸いてくるので大石まさる先生の漫画が一番のリフレッシュできる癒しの漫画です。
その中でも「月刊サチサチ」はトップクラスに癒されるのですよ。


というのも、「月刊サチサチ」は「水惑星年代記」本編と同時にアワーズに連載されていた作品で、本来は「水惑星年代記」の割り当てページを勝手に使って始めた4ページ漫画だったりします。
その頃の本編は「月娘」編で、1話や前後編の短編連作だった「水惑星年代記」において単行本1冊分の続き物であり最終章だっただけに大石先生も煮詰まっていたらしく、そんな中で「とりあえずサラッと描けるもの」として描かれたのが「サチサチ」なんですね。
だから大石先生にとってもリフレッシュの意味合いがあったでしょうし、ファンとしても気楽に読んでリフレッシュできるのは自然なことだと言えます。



「サチサチ」の作風は、「みずいろ」や「水惑星年代記」の地球で自然と密接した話を思わせる作風。
大学生の幸子さんが”幸せを探す旅”としてバイクで北へ旅立ち、見つけた廃バス停をねぐらに生活するというお話。
サバイバルとまではいかないけれど、ワイルドな自分探しでしょうか。


幸子さんの生活はもう自由で、廃バス停の中を改造してみたりハシゴをかけてみたり、食事は釣りや収穫、仲良くなったその地の人達との触れ合いなどで成り立っています。
翻訳のバイトで少しの収入と、ボランティアなんかをして報酬というか収穫というか気の良いおっちゃんから野菜を貰ったり。



大石先生は自然の描写がとてつもなくキレイで、厳しくも楽しいものだと感じられる描き方をされる作家さんです。
幸子さんの生活でも、冬場は氷で管楽器を作り、夏はカヌーにテントを載せて1週間程水上生活をしたり。
他の作品でもそうですが凄くアウトドアで、基本的にインドアな私でも山や海、川に行きたくなる程。


大石先生の作品を読むと、自然も人も優しくて、でも前に進み旅立って行かなくてはならない寂しさのようなものを感じます。
それが多分、彼の作品の根本に流れているものなんじゃないかな。
あと、ひたすら楽しもう!って気持ち。
「〜する幸子さんでした」みたいな形で作者による状況説明がされているのも、見守るような微笑ましさがあります。



「サチサチ」でニヤリとするのは幸子さんの友達のホタル。
コメントに書かれていることではありますが、「泥棒猫」のホタルとサッコの関係まんまなのです。
大石作品ではリンクしていたりゲストキャラとして登場したりが多いのですが、「泥棒猫」が大石先生の作品の中では異色に感じられただけに、こういう形でリンクされると嬉しいものです。「してやられた!」という感じ。
ところどころで「泥棒猫」のままのホタルが描かれていたり、ボランティアの時に着た服もネズミ耳でしたし、ファンには堪りませんね。


ファンには堪らないといえば、古めの短編が2本掲載されているのも嬉しいです。
アワーズガールなんて雑誌は存在すら知らなかったですよ。
他にも単行本未収録の短編が結構あるみたいなので、それらもいつか単行本化して欲しいものです。