江戸の絵巻から現代の妖怪漫画までの流れを語る「図説 妖怪画の系譜」



図説 妖怪画の系譜(Amazon)


ひょんなことで「図説 妖怪画の系譜」なる本が出ているのを知って気になっていたのですが、ググっても全然内容がわからないでやんの。
立ち読みしてから購入するか決めようと思っていたものの、こういう研究や資料的な意味合いの強い本は置いていなかったりサイズがわからなかったりするんですよね。
というわけで、妖怪好きですし、まぁ買ってみるかということで購入。
京都国際マンガミュージアムが編集に関わっていますし、そうアレな出来じゃないだろうと思ったのでした。
兵庫県立歴史博物館との共同編集の本です。



妖怪漫画を百鬼夜行絵巻などの妖怪画にルーツをとり、江戸時代から現代までの妖怪画の流れを順序だてて系譜としている本です。
内容イメージとしては、中高生の時の日本史で副読本として使った図説みたいな感じ。
タイトルも図説ですしね。
仏像とか美術品が妖怪画に置き換わった形。


様々な絵巻や、浮世絵、妖怪図鑑に草双紙といった江戸時代のものが全体の1/3のページを使用しています。
そのあとで、明治維新以降の妖怪画、戦前の漫画、貸本、水木しげる御大、現代の漫画へと移っていく。


”妖怪画”という大きな流れを主題としている本なので、妖怪漫画の資料的なものを求めると面食らいます。
自分はそういう意味合いでも期待していたのですが、各時代の作品の紹介数はそれほど多くなく、1作品あたりの引用画像も多くはないです。
とはいえ、それは現代の話で、江戸時代のものなんかは普段馴染みがないだけに結構多めな印象を受けますね。
どちらにせよ、”妖怪漫画のルーツ”としての資料であり、現在刊行されている妖怪漫画のリスト的な資料ではありません。



系譜の他に、エッセイを3本と漫画を1本収録しています。
エッセイの1つは京極夏彦氏のものが2ページと、研究者が「朝霧の巫女」を平田篤胤で語っているエッセイが面白かった。
漫画は諸星大二郎先生の「ネット天国ニッポン」という4ページ漫画で、言葉遊び的にネットと妖怪が絡めてあるのに吹きだしてしまいました。




かなり面白かったのですが、144ページで1800円という値段を考えると、妖怪が好きで、妖怪漫画が好きで、系譜も知りたいと思う妖怪好き向けでしょうか。
創作資料としてもこの本単体では役立てるのは難しそうです。
自分の中の知識に深みを持たせることはできますし、この本から色々なものに触れてみようと思わせてくれるものではありました。