猫なんです猫。 - 学園創世 猫天!(1)〜(2)


 
学園創世 猫天!(1)/岩原裕二(Amazon)
学園創世 猫天!(2)/岩原裕二(Amazon)


猫を一匹飼ってもいい全寮制の学園「私立叉美学園」を舞台とした、伝奇漫画。
飼っていい動物が猫に限定されているのか、猫だらけです。
…あれ、「伝奇」って単語は漫画に使っても妥当だっけか?



■舞台設定


千年前に最古の猫神とされる「火焔」と他の霊獣を封じ、彼らの力を抑え続けてきた「双籠の姫」とその猫「白雪」。
火焔が封じられ、双籠の姫の結界がある地に建てられた学園が、「私立叉美学園」です。
そして、復活するとされる火焔や霊獣に対抗するため、双籠の姫と白雪に力を与えられた人間と猫を「対の者」。


火焔と霊獣は全てを滅ぼすために復活し、対の者はそれを倒す。
目的を果たせば、対の者には願いを叶えることができる。


入学日にいきなり巻き込まれ、対の者としての力を手に入れてしまったユミと飼い猫の勘助。
他の対の者、生徒会の面々と霊獣の戦いに足を踏み込む、という漫画です。



■設定上の制限による面白さ


この漫画には制限が多くあり、それが面白さに繋がっていると思います。



まず、舞台に対する制限。
土地に張られた双籠の結界と、建物に張られた桟道の結界。


双籠の結界は学園の土地を覆うもので、火焔と霊獣を外に出さないためのもの。
また、力を発動したままでは対の者も外には出られない結界。
これにより、作品の舞台は学園内に限定されており、これはバトルフィールドの広域化を防いでいると感じます。
もっとも、全てを滅ぼす霊獣にとっては、双籠の結界を滅ぼすことが当面の目的であり、展開次第では学園外にも舞台が広がる可能性は無きにしも非ず、ですが。


桟道の結界。
学園創始者による結界で、建物を霊獣から守る役割を持ちます。
双籠の結界よりは弱く破れる結界なのですが、巨大な力により学園が一気に大破壊されるのを設定的に制限しているのではないかな、と。



ふたつに、対の者に対する制限。
人間と猫の組による対の者は、片方でも力は使えますが、人間と猫が揃って初めて本当の力が出せる。
単独行動に対する制限であり、この漫画がパートナーとともに成長していく彼らを見せてくれるからこその設定だと思います。
読んでいると、単独で使える能力は身体能力の強化くらいのようで、特殊能力は使えないんじゃないだろうか。



みっつに、霊獣に対する制限。
桟道の結界により、建物の内部にそのままでは侵入できない。
建物を破壊するか、小結界を欺くか。
侵入するために人の体を乗っ取っているわけですが、力の制限があると思われます。
建物内では、本来の姿になれず全力を出せないだろうことは、異次元では真の姿だったラチが、図書館に戻ったら人間の姿に戻った2巻での戦闘から伺えます。



これらの制限が過度のインフレや、作品舞台の広域化を暗に防いでいるように感じるのです。
いばらの王」ではインフレは特になかったので、そういう心配は必要ないかも知れませんが。
ただし、それ故の展開の派手さ・爽快感に欠ける部分はあるかと。



■猫なんですよ、猫



猫を一匹飼ってもいい学園ということで、猫が溢れています。
学園敷地内の庭にはもちろん、図書館なんかは人より猫が多く利用していたりと、至る所に猫。
対の者の片方は、確実に猫なのでメインキャラにも猫多し。




しかも、対の者となった人間は猫と会話ができる能力が!
これにより全猫キャラとの会話が可能で、猫キャラの魅力が人間キャラと同じくらいに感じられる。
人間も猫もひねくれ者揃いのようですから。


冒頭での、ユミと勘助やりとりでコミュニケーションが全然取れていなかったのが好感が持てます。
会話できないと、やはりそういうものでしょうね。
「動物のおしゃべり」でも「会話ができるとしつけが違う」みたいなことやってましたし。



対の者となる動物が猫のみであること、飼っていい動物が猫限定みたいなこと(対の者が猫だからでしょうけど)、猫神である火焔以外の霊獣が猫ではないこと、と猫に対する愛がある漫画と言えるんじゃないだろか。



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