独特の表現法を持つ青春漫画 - おやすみプンプン(1)



おやすみプンプン(1)/浅野いにお(Amazon)


おやすみプンプン」の1巻が発売です。
浅野いにお、やっぱり面白れぇ!!



この漫画はヤングサンデー不定期連載されている漫画です。


普通の少年のプンプン。
でも家庭は普通とは言えません。
父は無職で、母に暴行(?)→父・失踪((明示されてませんが、逮捕されたんでしょうね))、母・入院。
で、家に一人になったプンプン宅に雄一おじさんが来て、両親が戻るまで一緒に暮らすことに。
学校では、田中愛子が転校してきて、プンプンは一目惚れ。
転校してきたばかりの愛子もプンプンに好意を持ってくれて…
…ん、この展開って普通だろうか?



フツーの小学生の少年が主人公の物語。
ただ、普通の漫画と違うのはオビの「比類無き衝撃のシュール×リアリズム悲喜劇」の謳い文句の通り、その表現法が独特であること。


主人公のプンプンは、ヒヨコの落書きのような姿で描かれています。
そういう形で表現のはプンプンとプンプンの家族・親戚だけで、他の人は普通の人間として描かれています。
これは、プンプンが”フツーの少年”としての表現、読者が感情移入しやすいように”特定の人間”としていないのかな?
また、プンプンのフルネームは「プン山プンプン」(父はプンプンパパ、母はプンプンママ)ですが、おじさんは「小野寺雄一」と普通の日本人の名前なのが面白いところ。
血縁という近しいものでありながら、家族とは線引きされているということなのかなぁ。



プンプンが特殊な描かれ方をしているのは外見だけではありません。
セリフが無い。
モノローグはありますが、フキダシによるセリフは一切ありません。
これも主人公の自我を薄めて、感情移入しやすくしてるのかな。ドラクエメガテンなんかのRPGの主人公みたいに。


主人公は小学5年の男子。
男子と、大人や女子と対比されて描かれていますね。


プンプンは落書きみたいな外見ながら、感情の表現は全身を使っており豊かすぎるくらいに豊か。
子供達も年齢相応の豊かな感情表現。



反面、登場する大人は大半が突然叫びだしたり奇行や示したりします。
体や社会的立場からのものはともかく、叫びだすなど明らかに異常な行動は”「子供から見た大人」が不可解なもの”の表現なんじゃないかな。


おやすみプンプン」では他の浅野いにお作品に比べて、顔のアップが多い気がする。
それも不安を煽るような不気味な表情が特に。
子供にもアップはありますが、大人のアップはほとんどが不気味さを伴っているのも、”不可解なもの”としての表現でしょうね。



小学5年くらいの年齢だと、思春期で女子は男子よりも先に大きく成長します。
プンプンやシミちゃんには”神様”がいるけど、女子にはいる描写がされてません。*1
神様は、電波とか狂っているのではなくて中二病的な妄想だと思います。
また、女子は男子に「怖い」と思わせる面があります。
男子よりも大人で、無邪気さと残酷さを持っているのが女子なんだよなぁ。



そして、引いた視点での見開きや大ゴマの爽やかさ・広大さは、やはり浅野いにおの伝家の宝刀だと思う。
顔は寄りすぎなくらいアップが多いので、余計に。
あの抜けるような空や自然の描写を見ると、青春漫画だと思えます。



おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス)

おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス)

*1:女子でメインキャラが今のところ、愛子しかいないというのもありますが