短歌×恋愛 - ショートソング(1)
ショートソング(1)/小手川ゆあ 原作:枡野浩一(Amazon)
小手川ゆあ先生の新刊発売ですよ!
小手川ゆあ先生は「おっとり捜査」の頃から好きなので待望すぎるくらい待望の新刊です。
この「ショートソング」は小手川ゆあ先生初の原作付き作品。
原作は人気歌人である枡野浩一氏の同名小説らしく、歌人が書いた原作が元なのでこの漫画の短歌に関する感性はリアリティがあるものなんでしょうね。
私は短歌はさっぱり解りませんし、原作も知らないので原作にどれだけ沿っているかは解りませんが、この漫画はこれ単体で十二分に面白い青春漫画となっています。
この漫画はオビに『31文字の青春とSEX』とあるように、短歌×恋愛な青春漫画。
雰囲気はややアダルティックでしょうか。
主人公はハーフで顔が良い、19歳大学生の国友克夫。
彼は顔が良いのですが、服装には無頓着で、ハーフなのに英語が話せず(ハーフだから英語ができるという認識も大概、偏見ですが)、自分に自身がありません。
で、童貞。
片想いをしている舞子先輩には、良いのは「顔」だけというようなことを言われる始末。
この舞子先輩は、キレイで性格がキツい美人。彼氏持ち。
その彼氏・伊賀寛介は、こらまた顔が良くて女にモテ、手が早く浮気をするタイプ。
舞子先輩の良いと思っているところが「他の女と寝ても動じないところ」という男。
モテすぎだろ、ムキー!
彼には短歌の才能があり、狭い歌壇の世界では有名人。
この3人がこの漫画のメイン、いや、国友と伊賀の2人を軸に動いている漫画です。
伊賀への当て付けとして、舞子先輩は国友を短歌の結社「ばれん」の歌会に連れて行きます。
まったくの素人である国友もそこで短歌を作るハメに。
伊賀曰く、歌人は「短歌を始めたころが最大級に輝いていて、あとはその輝きの残像を追い求めていくしかない」という存在。
それ故に伊賀は、短歌の才能があり若い国友に嫉妬。
逆に国友は、良い短歌を作りカッコイイ伊賀に憧れます。
この二人の対比的な関係がこの漫画の面白いところのひとつでしょう。
かたや、その道では有名ながら全盛期の輝きはないと自認する25歳。かたや、若い才能に溢れ面白い短歌と次々と作る19歳。
かたや、彼女持ちで女にモテていることを自覚し、浮気をする男。かたや、童貞で顔が良いのに服装などに無頓着で、好きな女性は彼氏にかなりホレている風な報われない男。
お互いに相手のことを「ハーフで顔が良くて才能があるくせに、なんでそんなに自身がないんだ」とか、「カッコ良くて彼女がいるのに、なんで他の女性に手を出すんだ」と思っているのでした。
国友と伊賀は勘違いしあっていたりする部分もあるので、そこも対比的な関係でしょうね。
また、自身がない国友と違って、伊賀はサド。
伊賀は「国友が困ったり喜んだりで顔を歪めるのを見ると快感を感じる」らしく、色々と弄ばれます。
そのせいで国友は、伊賀にフラれたと思った舞子先輩と付き合えそうになったのを阻止されたり、その後に好きになった女性との進展を妨害されそうになったり(伊賀以外の思惑もあったけど)と、女運がないのでした。
小手川ゆあ先生はシリアスな部分はもちろん、くだけたコメディタッチの絵柄も魅力。
そのコメディ部分はサドな伊賀に一番凝縮されている気がします。
カッコイイのに思考がもう身近に感じすぎる国友の考え方に、ある種の親近感を覚えてしまう。
国友と伊賀の関係がキモだろうから、国友の短歌の才能は伸びつつも童貞のまま展開していきそうな気がします。
そういう展開なら、女性キャラは新キャラも出てきそうな気もします。
個人的に、小手川ゆあ先生の描くキャラ、特に女性キャラは好きなので色気のある展開は嬉しいですね。
- 作者: 枡野浩一,小手川ゆあ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/09/04
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (30件) を見る