漫画のネタとして付き合いはじめた、漫画家×漫画家百合「まんがの作り方」。



まんがの作り方(1)/平尾アウリ(Amazon)


コミックリュウで連載中の、漫画家×漫画家の百合漫画「まんがの作り方」の単行本がついに発売ですよ。
元々はリュウの漫画賞である龍神賞の受賞作品だったのですが、連載化してこうして一冊の本となったのです。
リュウの受賞作品は比較的そのまま連載になりやすいとはいえ、そのひとつに百合があるのが嬉しいのでございます。
リュウは一般誌だけど割と百合があるのよね。



さて、「まんがの作り方」は漫画家の漫画ですが、主人公の川口あすかは”元漫画家”です。
13歳の頃にデビューして話題になったものの、その後は泣かず飛ばずでフェードアウト。
19歳の今!バイトも辞めて再デビューに向けて志を新たにしました。現在、ニート


しかしネタが浮かばない、描けるものがない。
そんな時、後輩でバイトも同じだった森下が心配して家まで来まして、川口先輩は好意を抱いてくれている森下に「私と付き合っちゃうか」と尋ねるのでした。
しかし、先輩の動機は「ガールズラブが流行ってるし、ネタになるはず!」と、ただただ不純。
…確かに百合が増えてきている感じはしますが、実際は流行ってるってほど流行ってる気がしないのは何故だ。もっともっとと求めすぎなのでしょうか。
話が逸れましたが、森下の方はガチ。



個人的な印象ではあるのですが、「まんがの作り方」はどこか不確かな感じがします。
というのも、主人公である先輩*1が確固たるものを持っていないからそう感じるのでしょう。
漫画家を目指しているものの描きたいものがない、でも「描かなくちゃ」、森下と付き合っているからそのうち「キスしなくちゃ」…と。


そんな彼女が発売日に単行本を買う唯一の作家が「さち」。
さちの漫画を読んでまた漫画を描こうと思うくらいに好きなのですが、実はさちが森下だと、森下の同級生である弟に言われます。


ちなみにこの弟、森下が好きなのですが全く相手にされていません。
てか、先輩もかなり優柔不断というか信念みたいなものが薄いのですが、弟は輪をかけて自己中すぎる。
自分の好きな娘が同性の姉と付き合っているとはいえ、口に出す勇気がなくとも「別れちまえ」とか、目元や鼻・口に髪質が似ているからって「俺でいいじゃん」は違うだろう。冗談でも「姉ちゃんの代わりに付き合ってあげてもいいのに」って、何で上から目線なんじゃ、貴様。
森下は「似ているから好き」じゃなくて、「先輩だから好き」なんですよな。



また話がちょっとズレました。
森下の方はというと、先輩が13歳の時に描いた漫画が好きじゃないけど面白くて、それくらいなら自分にも描けると思ったのが漫画を描くキッカケになっています。
描きたい漫画を描いて、好きだから先輩とキスしたいし、先輩は面白い漫画を描けると信じている。
だからといって悩みがないわけでもなく、「おもしろいと思ったものを描いているけど、他人がおもしろいと思うかどうかわからない」。


百合は描けないと悟ったものの先輩が漫画のネタを得るために付き合うことにしたのを森下は知っています。
お互いに漫画を描く者同士、何かしら補えることがあって、一緒にいるのはそれだけではないはず。
森下の卒業後の話をしていて結婚も選択肢として薦めるなど、根本ではストレートでありながらも、森下に接近しようとする弟に苛立ちを覚えたり、漫画のネタにならないと知っても一緒にいる時間を作ろうとしたり、実際にデートを良くしていたりと、先輩は気付かないうちにどんどん森下を好きになっていっているに違いありません。
それにしても、結婚という言葉を出された時にプロポーズと受け取る森下がガチすぎて良いです。
甘えん坊気質で、限度はわきまえているけどくっつきたがりなのもよろしく、それが先輩にも伝わっているんだろうなぁ。



森下は先輩が普通に男性と結婚すると思っているけど、それ以上に先輩が森下を好きになって、このまま二人で一緒にいることを選ぶ展開を希望したいものです。


*1:森下が「先輩」と呼ぶので、ウチでも「先輩」と呼びます。